R.シュトラウス《サロメ》あらすじ・聴きどころを解説|七つのヴェールと、拒まれた口づけ

月明かりの宮殿で、ひとつの願いが恐ろしい姿に変わる

古代の宮殿、月光、地下の貯水槽を主題にしたイメージ。

踊ってくれれば、望むものを何でも与えよう。宮殿の支配者ヘロデが口にした約束に、サロメは思いもよらない報酬を求めます。宝石でも王国でもなく、自分を拒んだ預言者の首でした。

リヒャルト・シュトラウスの《サロメ》は、月の明るい一夜を約100分で描くオペラです。遠くから響く声に惹かれる好奇心が、触れたい、口づけしたいという欲望へ変わり、やがて取り返しのつかない要求に行き着く。その過程を、色彩豊かなオーケストラが途切れることなく追いかけます。

残酷な物語なのに、音楽には息をのむほど甘美な瞬間があります。耳が惹きつけられるほど、目の前で起きていることの恐ろしさが増していく。そんな忘れがたい体験をもたらす作品です。

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作曲リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)/作品54
台本シュトラウスがワイルドの戯曲のラハマンによるドイツ語訳を短縮・構成
原作オスカー・ワイルド《サロメ》(フランス語、1893年刊行)
初演1905年12月9日/ドレスデン宮廷歌劇場/指揮エルンスト・フォン・シューフ
言語・構成ドイツ語/全1幕(通常上演されるドイツ語版を紹介)
舞台紀元30年頃を想定したヘロデの宮殿のテラス
演奏時間約1時間40分(指揮や上演により前後)
休憩込み通常は休憩なしで約1時間40分。

1分でわかるあらすじ

王女サロメは、義父ヘロデの視線を嫌って宴席を離れ、宮殿のテラスへ出ます。そこで地下の貯水槽に囚われた預言者ヨカナーンの声を聞き、衛兵隊長ナラボートに頼んで彼を外へ出させます。サロメはヨカナーンの姿に惹かれ、口づけを求めますが、厳しく拒まれました。彼女を慕うナラボートは絶望して自ら命を絶ちます。やがてヘロデが、踊りの報酬に望むものを何でも与えると約束。サロメは「七つのヴェールの踊り」を踊り、ヨカナーンの首を要求します。ヘロデは説得を重ねた末に処刑を認め、サロメは運ばれた首に口づけします。その姿に戦慄したヘロデは彼女の殺害を命じ、兵士たちが盾で押しつぶして殺します。

登場人物と相関図

サロメを中心に、家族関係と一方的な要求を整理した相関図。クリックで拡大できます。

サロメ|ソプラノ ヘロディアスの娘で、ヘロデの義理の娘。宴席では見られることを嫌う彼女が、ヨカナーンに出会うと、今度は自分から相手を見つめ、欲しいと求め続けます。

ヨカナーン|バリトン 洗礼者ヨハネに当たる預言者。ヘロデの宮殿の地下に囚われ、ヘロディアスの罪を非難しています。サロメには悔い改めて救いを求めるよう説き、接触を拒みます。

ヘロデ|テノール 領主であり、サロメの義父。妻の連れ子であるサロメに欲望を向ける一方、ヨカナーンを聖なる人物として恐れています。権力を持ちながら、不吉な兆しに動揺する人物です。

ヘロディアス|メゾソプラノ サロメの母で、現在はヘロデの妻。もとはヘロデの兄弟の妻であり、その関係をヨカナーンから非難されています。娘が彼の首を求めると、強く後押しします。

ナラボート|テノール 若いシリア人の衛兵隊長。サロメに惹かれ、ヘロデの命令に背いてヨカナーンを外へ出します。そばにいるヘロディアスの小姓は、彼の危うい様子を心配しています。

詳しいあらすじ|全1幕、宮殿の一夜

舞台はヘロデの宮殿にあるテラス。宴会場に隣接し、古い貯水槽にはヨカナーンが閉じ込められています。幕が分かれていないため、ここでは出来事の流れに沿って五つに分けて紹介します。

1.宴席を逃れたサロメが、地下からの声に耳を澄ます

宴席を離れたサロメが、ヨカナーンの声を聞く。

月の明るい夜。ナラボートは宴席にいるサロメの美しさに見とれています。小姓は、彼女をそんなに見つめてはいけない、恐ろしいことが起こると繰り返し忠告しますが、ナラボートの目は離れません。

そこへサロメが宴会場から出てきます。ヘロデにじっと見られることが耐えられず、外の空気を吸いに来たのです。宮殿の騒がしさを離れ、月を眺めていると、地下から預言者の声が響きます。

声の主はヨカナーン。母について恐ろしいことを言う人物だと知っているサロメは、会ってみたいと兵士に頼みます。ヘロデが面会を禁じているため断られますが、彼女はナラボートへ向き直り、明日、自分が通るときに花を落とし、視線や微笑みを送ると約束します。サロメを慕うナラボートはついに折れ、兵士たちに預言者を外へ出すよう命じました。

2.拒まれるたびに、欲望が強くなる

サロメの願いを、ヨカナーンは受け入れない。

貯水槽から現れたヨカナーンは、ヘロデとヘロディアスの罪を激しく非難します。サロメはその厳しさに驚きながら、痩せた白い身体、黒い髪、赤い唇に心を奪われていきます。彼の言葉は罪を悔いるよう促しているのに、彼女にはその声自体が魅力的な音楽として響いています。

サロメはまず身体に触れたいと求め、拒まれると身体を罵って髪を褒めます。髪への接触も拒まれ、最後には唇への口づけだけを求めるようになります。褒め言葉と罵りが次々に入れ替わっても、相手を手に入れたいという気持ちは変わりません。

ナラボートは、サロメがこの男にそんな言葉をかけることに耐えられず、自ら命を絶ちます。それでもサロメはヨカナーンに口づけを求め続けます。彼は彼女を退け、救いを求めるべき相手として「人の子」を示しますが、サロメの願いは届きません。彼女を呪われた者と呼び、地下へ戻ってしまいます。

この対面は、二人が歌い交わす場面でありながら、気持ちが近づく二重唱にはなりません。サロメが求めるものとヨカナーンが語るものは、最後までかみ合わないままです。

3.ヘロデの約束が、サロメに力を与える

ヘロデはサロメに踊りを求め、ヘロディアスは反対する。

サロメを捜して、ヘロデがヘロディアスとともにテラスへ出てきます。ナラボートの血で足を滑らせ、死体を見つけたヘロデは、すぐに不吉な兆しとして怯えます。風の音や羽ばたくような気配にも落ち着かず、サロメを自分のそばへ招こうとしますが、彼女は酒も食べ物も断ります。

地下ではヨカナーンが預言を続け、テラスでは宗教をめぐる議論が始まります。ヘロディアスは、自分を非難する声を黙らせたい。ヘロデは、預言者を傷つけて災いを招くことが怖い。夫婦の考えも一致しません。

ヘロデはサロメに踊りを求めます。最初は断られますが、踊ってくれれば何でも与える、王国の半分でもよいと申し出ると、彼女の態度が変わります。本当に何でも与えるのか、誓うのか。サロメは約束を確かめ、ヘロデは自分の生命、王冠、神々にかけて誓います。母が止めても、サロメは踊ることを決めました。

4.「七つのヴェールの踊り」の報酬

誓われた報酬を手に入れるため、サロメは踊る。

歌声が途切れ、オーケストラだけによる「七つのヴェールの踊り」が始まります。激しい響きから柔らかく揺れる音楽へ、さらに熱を帯びた動きへと移り、サロメはヘロデの前で踊ります。

踊りを終えると、サロメは銀の器にヨカナーンの首を載せて持ってくるよう求めます。ヘロディアスは喜びますが、ヘロデは拒絶します。母の言うことを聞くなと説得しても、サロメは母のためではなく、自分の望みで要求していると告げます。

ヘロデは大きなエメラルド、白い孔雀、宝石や神聖な品々まで差し出して、何とか別の報酬に変えようとします。そのたびに返ってくるのは、ヨカナーンの首が欲しいという同じ要求です。サロメは誓いを忘れるなと迫り、ヘロディアスも、皆がその約束を聞いたと畳みかけます。

説得を使い果たしたヘロデは、彼女の望むものを与えよと命じます。ヘロディアスが彼の指から処刑の指輪を抜き取り、兵士を通じて処刑人へ渡すと、処刑人は貯水槽へ降りていきました。

5.口づけを手に入れたサロメの最期

ヨカナーンを失った後のサロメを描く挿絵。

サロメは貯水槽のそばで耳を澄まします。叫び声が聞こえないことに苛立ち、兵士たちにも首を持ってくるよう迫ります。やがて地下からヨカナーンの首が差し出され、彼女はそれを受け取りました。

ここから、サロメの長い独白が始まります。生きているときには口づけを許してくれなかった相手に、今なら口づけできると語りかけます。閉じた目を開いてほしい、なぜ自分を見てくれないのか。身体、髪、唇を讃えた言葉が戻ってきますが、もうヨカナーンが答えることはありません。

ヘロデはその様子に恐怖を覚え、宮殿へ戻ろうとします。松明を消すよう命じ、テラスは暗くなります。サロメはヨカナーンの唇に口づけし、望みを果たしたことを歌います。

月が再び現れてサロメを照らすと、ヘロデは振り返り、彼女を殺せと命じます。兵士たちはサロメに襲いかかり、盾で押しつぶして殺します。

聴きどころ|踊りの華やかさと、最後の独白

七つのヴェールを主題にしたイメージ。

初めて聴くなら、まず「七つのヴェールの踊り」がおすすめです。歌詞を追わずに、このオペラの甘さ、色彩、危うさを味わえます。その後に最後の独白を聴くと、同じ華麗なオーケストラが、まったく違う恐ろしさを帯びることでしょう。

1.冒頭「今夜のサロメ王女は何と美しい」

歌うのはナラボート。原語の歌い出しは「Wie schön ist die Prinzessin Salome heute Nacht!」です。長い序曲を置かず、クラリネットの素早い動きから、すでに動いている夜の宮殿へ入ります。

彼の声には、サロメへの憧れがにじみます。そのそばで小姓が危険を告げるため、美しさを讃える言葉だけを安心して聴くことができません。明るい憧れと不安が、幕開けから同じ場所にあります。

2.ヨカナーンの登場「どこにいる、罪の杯が満ちた者は」

「Wo ist er, dessen Sündenbecher jetzt voll ist?」から始まるヨカナーンの歌。しっかりしたバリトンの声と、重みのあるオーケストラの響きが、宮殿の浮ついた空気を変えます。サロメが近づいても、彼の言葉は自分の使命から動きません。

歌唱では、低い声の量感だけでなく、言葉の輪郭が聴きどころです。短い呼びかけにも方向と強さがあり、サロメの揺れる旋律とは違う確かさが感じられます。二人の声の性格を聴き比べると、対面の緊張がつかみやすくなります。

3.サロメの要求「あなたの唇に口づけさせて」

「Lass mich deinen Mund küssen, Jochanaan」。同じ願いが繰り返される場面です。最初から最後まで同じ強さで叫ぶのではなく、誘いかける甘さ、拒まれた苛立ち、切迫した響きが移り変わります。

聴くときは、高音の迫力に加え、言葉へ入る瞬間と、フレーズの終わり方に耳を向けてみてください。息の流れを保ったまま声の色や言葉の圧力を変えることで、要求が次第に相手の逃げ道を塞ぐように聞こえます。ヨカナーンの拒絶が挟まるたび、サロメの歌がどう変わるかも見逃せません。

4.七つのヴェールの踊り

「Tanz der sieben Schleier」は、オーケストラだけの約10分の場面。細やかな木管、弦のしなやかな動き、打楽器の色彩が絡み合い、くつろいだ揺れと鋭い勢いが入れ替わります。リズムや音色が変わるところを追うだけでも、一本の曲として楽しめます。

舞台では、サロメが踊る目的にも注目しましょう。ヘロデを喜ばせるだけの余興ではなく、誓った報酬を手に入れるための行動です。踊りの見せ方は演出によって大きく異なりますが、終わった直後に何を要求するかを知ると、その華やかさの受け止め方が変わります。

5.最後の独白から「あなたの唇に口づけした」へ

最後の大場面は「Ah! Du wolltest mich nicht deinen Mund küssen lassen, Jochanaan」で始まり、終わり近くに「Ah! Ich habe deinen Mund geküsst, Jochanaan」が現れます。前者は口づけを拒まれた相手への語りかけ、後者はその願いを果たした言葉です。

サロメはすでに処刑を実現させています。それなのに歌には、誇りだけでなく、訴えかける弱さや切実さも現れます。大きく広がる弦の響きに声が乗るところでは、目の前の残酷な状況と、愛を語るような音楽との食い違いが強烈です。

歌手には、厚いオーケストラに届く声と、長い独白を一つの流れにまとめる力の両方が求められます。すべてを最大の声量で歌えばよい場面ではありません。語りかけに戻る部分や、同じ言葉の色が変わるところを聴くと、サロメ役の表現の幅が分かります。そして最後には、広がっていた音楽が、ヘロデの命令と激しい終結によって断ち切られます。

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見られる王女が、見る側へ回ったとき

銀の器と王冠を主題にしたイメージ。

視線を拒むサロメが、ヨカナーンの拒絶を認められない

冒頭のサロメは、ヘロデに見つめられることを嫌って宴席を逃れます。誰に見られるかを自分で選べない宮殿で、彼女は不快な視線から離れようとしています。

ところがヨカナーンに出会うと、サロメは彼の身体を見つめ、触れたい、口づけしたいと迫ります。ヨカナーンが見られることも触れられることも拒んでいるのに、その拒絶を受け入れません。自分が嫌だった扱いと似たことを、今度は相手に向けてしまう。この入れ替わりに注目すると、彼女をただの誘惑する女として眺めるだけでは見えない関係が浮かびます。

ナラボートもヘロデもサロメを見つめますが、ヨカナーンは自分を見ようとしない。最後の独白でサロメが繰り返す、なぜ見てくれなかったのかという問いには、口づけを得ても解決しなかった願いが残っています。相手の身体を手に入れることと、相手から愛されることの距離が、ここで露わになります。

美しい音楽が、サロメの行為をいっそう恐ろしくする

最後の場面を、残酷な出来事に合わせて不気味な音だけで描けば、観客は距離を取って眺められたかもしれません。シュトラウスはそこに、豊かな旋律と大きくうねるオーケストラを置きます。聴いている側が音楽に引き込まれた瞬間にも、サロメが語りかけている相手は死者です。

美しさが彼女の行為を正当化するわけではありません。音楽が伝える切実さに触れながら、その要求が他者の生命を奪ったことも目にするため、観客の気持ちは一つにまとまりません。歌に惹かれる感覚と、起きていることへの拒否感が同時に生まれる。その居心地の悪さまで含めて、《サロメ》の最後は強く記憶に残るのです。

聖書の物語から、1905年の衝撃へ

ワイルドが変えた、首を求める理由

オーブリー・ビアズリー《孔雀のスカート》(1893年)。1904年版の戯曲《サロメ》所収。パブリックドメイン。 Wikimedia Commons

物語の出発点は、新約聖書に登場するヘロディアスの娘と洗礼者ヨハネの処刑です。福音書では、娘は母の意向を受けてヨハネの首を求めます。オスカー・ワイルドはこの題材からフランス語の戯曲《サロメ》を書き、1893年に刊行しました。

ワイルドの劇では、サロメ自身がヨカナーンに惹かれ、拒絶されたのちに首を求めます。首への口づけとサロメの死も、聖書の記述をそのまま舞台にしたものではありません。宗教的な物語を、欲望、視線、拒絶をめぐる劇へ作り替えたところに、この《サロメ》の特徴があります。

ビアズリーの挿絵を見ると、古代の出来事が19世紀末の美意識によって受け止め直されていたことも感じられます。人物の装いも線の形も写実的な歴史再現ではなく、戯曲の妖しい雰囲気を独自の姿にしています。

言葉の反復を、音楽の変化にする

リヒャルト・シュトラウス。1902年1月11日刊行の雑誌に掲載された写真。撮影者不詳/パブリックドメイン。 Wikimedia Commons

シュトラウスは、ヘートヴィヒ・ラハマンによるドイツ語訳をもとに、戯曲を短縮してオペラの台本を組み立てました。通常上演されるドイツ語版では、ワイルドの劇にある言葉の反復が、重要な表現として残っています。

口づけしたいという要求も、首をよこせという要求も、文字だけを追えば似た言葉が何度も続きます。音楽になると、相手の返答やオーケストラの動きによって、同じ言葉が前とは違う圧力を持ちます。ためらい、誘惑、苛立ち、命令を、言葉をすべて変えずに聞き分けられるところが面白く感じられるところです。

編成は大きく、木管と金管を厚くそろえ、2台のハープやチェレスタなども加わります。大音量だけが目的ではなく、冷たい月光のような響き、濃密な甘さ、宮殿の騒がしさを描き分けるための豊かな色彩です。歌とオーケストラが一緒に人物を語るので、歌声の後ろで何が変わるかにも耳を向けると楽しみが増えるでしょう。

初演の成功と、受け入れられなかった舞台

アリス・グシャレヴィチのサロメ役。1906年ケルンまたは1907年ライプツィヒ。撮影者不詳/パブリックドメイン。 Wikimedia Commons

初演は1905年12月9日、ドレスデンの宮廷歌劇場。エルンスト・フォン・シューフが指揮しました。《サロメ》はシュトラウスをオペラ作曲家として大きく押し上げた作品ですが、その題材と音楽は強い反発も招きます。

1907年1月22日にメトロポリタン歌劇場で上演されると、劇場の運営側から異議が出て、そのときの予定公演は初回の一度だけで取りやめられました。初演地で成功した作品が、別の都市ではそのまま受け入れられなかったのです。死者への口づけを、壮麗な音楽とともに舞台で見せることは、当時の観客にとって強い挑戦でした。

初期のサロメ役の写真からは、役が視覚的にも強烈な存在として提示されていたことが分かります。現代の演出は古代の宮殿に限らず、家族の支配やサロメの孤立へ焦点を移すこともあります。舞台の見た目が変わっても、誰が誰を見つめ、何を要求し、どこで拒絶するのかを追えば、物語の核を見失わずに観られます。

初めて観るなら、願いの変化を追ってみる

《サロメ》は基本的に休憩なしで上演されます。人間関係を先に押さえたら、鑑賞中は「誰が誰に、何を求めているか」を追ってみてください。サロメが最初に求めるのはヨカナーンとの面会。その後、接触、口づけ、首へと要求が変わっていきます。ヘロデは踊りを求め、ヨカナーンは悔い改めを求める。願いが向き合わないまま、一夜が進んでいきます。

音楽では、ヨカナーンの揺るぎない声とサロメの変化する声を比べ、踊りに入ったらオーケストラの色彩を楽しみましょう。最後の独白では、サロメの歌だけでなく、ヘロデがどのように反応しているかにも目を向けると、終結の急激さがよく分かります。

月明かりのテラスで聞こえた一人の声が、サロメの願いを変えていく。約100分を聴き終えたとき、その声を初めて聞いた瞬間も、きっと違った重みを持って思い返されるでしょう。

参考資料と画像の出典

Richard Strauss Werke:Salome 校訂版の歌唱テキスト — 場面順序、人物の行動、歌い出し、処刑と最後の盾による殺害。

Richard Strauss Werke:Salome 成立史 — ワイルド原作、ラハマン訳、1893年の原作刊行。

Boosey & Hawkes:Salome — 初演、構成、声種、舞台、編成、100分の目安。

Semperoper Dresden:Salome — 1905年12月9日の初演と作品の位置づけ。

Metropolitan Opera Archives:1907年1月22日の上演 — 1907年初演、予定公演の中止。

Wiener Staatsoper:Salome — 作品案内の総時間100分(2026年10月確認)。

マルコによる福音書6章(Bible Gateway) — 聖書では娘が母の意向を受けて首を要求すること。

IMSLP:Salome, Op.54 — 総譜・ピアノ声楽譜の掲載。

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