モーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』のあらすじ・聴きどころの解説|恋を試した六人の一日

恋人の顔が変わったら、愛は見抜ける?

ナポリの海辺と、恋人の面影を閉じ込めた小さな肖像。

別れを告げた恋人が、立派な口ひげをつけて戻ってくる。しかも、今度は自分ではなく、姉妹のもう一人を口説き始める。モーツァルトのオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』は、そんな危うい遊びから始まります。

仕掛けるのは、恋人の愛を少しも疑っていない二人の青年。彼らは、年長の男との賭けに乗り、自分たちの手で恋人の心を試します。うまくいけば、愛の強さが証明されるはずでした。ところが、芝居で始めた口説き文句が、次第に本当の感情を動かしてしまうのです。

華やかな変装、偽の出征、怪しげな医者、慌ただしい結婚式。舞台には笑いの仕掛けがあふれています。その隙間から聞こえてくる音楽は、驚くほど優しく、時には胸が痛むほど切実です。誰が誰をだましているのかを追っていたはずが、いつの間にか、だまされた人の心に耳を澄ませている。そこに、この作品の面白さがあります。

読みたいところへ

1分あらすじ → 人物と相関図 → 詳しい物語 → 聴きどころ → 成立背景

作品コジ・ファン・トゥッテ(Così fan tutte)K.588
副題恋人たちの学校(La scuola degli amanti)
作曲/台本ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/ロレンツォ・ダ・ポンテ
原作ダ・ポンテの台本。特定の戯曲を直接の原作とする作品ではない
初演1790年1月26日、ウィーン・ブルク劇場
言語・構成イタリア語/全2幕のオペラ・ブッファ
舞台18世紀末のナポリ。姉妹はフェラーラ出身
演奏時間の目安約2時間45分〜3時間。カットとテンポで変わる
休憩込みの目安約3時間15分〜3時間30分。新国立劇場2024年公演は約3時間30分と案内 [3]

1分でわかるあらすじ

ナポリの青年士官フェランドとグリエルモは、恋人である姉妹ドラベッラとフィオルディリージの貞節を信じています。老哲学者ドン・アルフォンソはその自信に賭けを持ちかけ、二人を出征したように見せかけます。青年たちはアルバニア人に変装し、それぞれ相手の恋人を口説くことに。女中デスピーナも恋の仲介に加わり、最初は拒んだ姉妹の心が揺れ始めます。ドラベッラに続いてフィオルディリージも新しい求愛を受け入れ、二組は結婚契約に署名するところまで進みます。そこへ元の恋人たちの帰還が告げられ、変装と賭けが明らかに。四人は和解へ導かれますが、互いの弱さを知った愛の行方には、ほろ苦い余韻が残ります。

六人で動く、恋の実験室

左は開幕時の恋人同士、右は変装後の求愛。画像を押すと拡大できます。
人物・声種役割と関係
フィオルディリージ(ソプラノ)姉。グリエルモの恋人。変装したフェランドの求愛に抵抗する
ドラベッラ(メゾソプラノ)妹。フェランドの恋人。変装したグリエルモに心を許す
フェランド(テノール)青年士官。ドラベッラの恋人。変装後はフィオルディリージを口説く
グリエルモ(バリトン)青年士官。フィオルディリージの恋人。変装後はドラベッラを口説く
ドン・アルフォンソ(バス)老哲学者。青年たちと賭けをし、一日の実験を指揮する
デスピーナ(ソプラノ)姉妹の女中。医者・公証人にも変装し、求愛を仲介する

最初の恋人同士は、フィオルディリージとグリエルモ、ドラベッラとフェランドです。変装した後は、フェランドがフィオルディリージを、グリエルモがドラベッラを口説きます。この交差だけを押さえておけば、物語はぐっと追いやすくなります。

仕掛けの全体を知っているのは、ドン・アルフォンソと二人の青年。デスピーナは協力者ですが、外国人に変装した二人の正体までは知らされていません。姉妹と一緒に、彼女も最後には種明かしに驚くことになります。[1]

第1幕|絶対の愛を、試してみよう

百ゼッキーニの賭け

ナポリのカフェで、フェランドとグリエルモは恋人の忠実さを誇っています。フェランドの恋人は妹ドラベッラ、グリエルモの恋人は姉フィオルディリージ。美しく、誠実で、ほかの男に心を動かされるはずがない。二人の確信に、年長のドン・アルフォンソが水を差します。

言い争いは、百ゼッキーニを賭けた実験へ発展します。一日だけ、青年たちはアルフォンソの指示どおりに行動すること。その間に姉妹の心が変わるかどうかを確かめるのです。自分たちが勝ったら、恋人たちを招いて祝いの席を設けよう。青年たちはすでに、勝利を楽しみにしています。

一方、海辺の庭では、姉妹がそれぞれ恋人の肖像を眺めています。二人で好みを語り、再会を心待ちにする時間です。そこへアルフォンソが現れ、青年たちに急な出征命令が下ったと告げます。恋人たちは本当に別れを惜しんでいるように振る舞い、姉妹は涙で見送ります。

姉妹は、出征したと思っている恋人たちの船を見送る。

船が遠ざかると、姉妹とアルフォンソが三重唱《風よ、穏やかに》を歌います。海と風に、旅の無事を託す静かな祈りです。姉妹は心から祈り、アルフォンソは自分が仕掛けた別れに声を重ねる。同じ美しい和音の中に、真実と芝居が同居しています。

ゆったり揺れる伴奏に、三人の声が溶け合う数分間。これから始まる騒ぎを知っていても、この別れの美しさには引き込まれます。『コジ・ファン・トゥッテ』を初めて聴くなら、まずこの曲から入るのがおすすめです。

口ひげの向こうにいるのは誰?

変装した青年たちの求愛を、姉妹は拒絶する。

姉妹の家では、女中デスピーナが働いています。恋人を失ったように嘆く二人を見て、彼女は現実的な助言を始めます。男たちが旅先で忠実に待っていると、どうして信じられるのか。彼らが楽しむなら、こちらも新しい恋を楽しめばいい。姉妹が守りたい理想に、デスピーナは軽快な調子で揺さぶりをかけます。

アルフォンソはデスピーナに金を渡し、二人の外国人の求愛に力を貸すよう頼みます。やって来たのは、口ひげと異国風の衣装で姿を変えたフェランドとグリエルモ。台本ではアルバニア人の貴族に扮しています。姉妹は彼らを恋人とは気づかず、突然の求愛に腹を立てます。

フィオルディリージは《岩のように動かず》を歌い、自分の愛は揺るがないと宣言します。堂々とした出だしから、声が低く沈み、すぐに高く跳び上がる。大きな音域の動きが、毅然とした決意を舞台いっぱいに広げます。姉妹に追い払われた青年たちは大喜び。やはり、自分たちの恋人は忠実だったのです。

フェランドは《愛のそよ風は》で、恋人の愛があれば満たされると歌います。先ほどの強い拒絶とは対照的に、旋律は柔らかく長く伸び、幸福な信頼が静かに息づきます。彼にとって賭けは、愛を確かめる愉快な余興のままです。アルフォンソは、その喜びをまだ早いと見ています。

偽の毒と、磁石を持った医者

医者に扮したデスピーナが、磁石を使って偽の服毒を治療する。

庭に戻った青年たちは、求愛が拒まれたため毒を飲む、と大芝居を打ちます。もちろん、服毒は演技。二人が倒れると、姉妹の怒りは恐れと同情に変わり、助けようと動き始めます。アルフォンソが治療の手配に加わり、デスピーナは医者に変装して現れます。

この医者が使うのは、奇妙な磁石。磁気の力で病人を治すという、当時の流行を思わせる治療を演じ、倒れた二人を蘇らせます。重々しい診察のふりと、医者になりきったデスピーナの声色が、深刻な状況をどんどん喜劇へ変えていきます。

息を吹き返した青年たちは、目の前の女性を女神のように持ち上げ、口づけまで求めます。姉妹はまた怒って拒絶しますが、最初の拒絶とは少し違います。すでに手を差し伸べ、命を案じてしまった相手なのです。第1幕の終わりでは、二人の怒り、青年たちの期待、仕掛け人たちの計算が、にぎやかな重唱の中で一斉に走り出します。[1]

第2幕|芝居の恋が、本当の心を動かす

まず揺れたのは、ドラベッラ

デスピーナは再び姉妹を説得します。恋の駆け引きも身につけ、相手を上手に扱えばいい。二人は、外国人たちと少し楽しむくらいなら、と話し始めます。ドラベッラは黒髪の男を選び、フィオルディリージはもう一人を受け持つことに。こうして、本来の恋人同士を交差させる組み合わせがはっきりします。

ここで姉妹が歌う二重唱《私はあの黒髪の人を選ぶ》は、恋の相談が弾む場面です。第1幕であれほど嘆いていた二人が、新しい相手について声を軽く重ねる。音楽の身軽さが、二人の気持ちの変化を先に知らせます。

ドラベッラは、心形の贈り物と恋人の肖像を交換する。

庭でそれぞれ二人きりになると、グリエルモはドラベッラに近づきます。《心をあなたに差し上げます》を歌いながら、心臓の形をした贈り物を差し出し、代わりに彼女が持つフェランドの肖像を手に入れます。恋人の顔が入った品が、新しい求愛者への贈り物と交換される。心の変化が、目に見える行動になる瞬間です。

声は相手の旋律を受け取り、同じ流れに乗っていきます。最初は断っていたドラベッラも、やがて甘いやり取りを楽しむようになります。グリエルモは彼女を口説くことに成功しますが、その成功は、友人フェランドの恋が揺らいだ証拠でもあります。

岩のような決意に、ひびが入る

フィオルディリージは、なおフェランドを拒みます。それでも、彼が去ると、自分の心に起きた変化を認めずにはいられません。遠くにいるはずのグリエルモへ向けて歌う《お願い、愛しい人よ、許して》には、恋人への忠実さを守りたい思いと、すでに別の男に引かれている苦しさが重なります。

第1幕の《岩のように動かず》で、彼女は周囲に向かって決意を示しました。このアリアでは、一人で自分の心と向き合います。長い旋律を支える息、慎重に運ばれる言葉、やがて激しくなる音の動き。立派な宣言の奥にいた、傷つきやすい一人の女性が見えてきます。

戦地へ向かおうとしたフィオルディリージの前に、フェランドが現れる。

青年たちが結果を報告し合うと、グリエルモはドラベッラから受け取った肖像を見せます。フェランドは、自分の恋人が友人に心を許したと知り、打ちのめされます。その隣でグリエルモは、自分の恋人の忠実さをまだ誇っています。同じ賭けに参加した二人の間に、勝った側と傷ついた側の違いが生まれるのです。

フィオルディリージは誘惑から離れるため、軍服に着替え、恋人たちのいる戦地へ向かおうとします。行動を変えれば、心も守れるはず。ところが、出発しようとする彼女の前へ、フェランドが再び現れます。彼は切迫した求愛を続け、ついにフィオルディリージはその愛を受け入れます。

二重唱《もうすぐ、愛する人の腕に抱かれて》は、出発を思い描く彼女の歌から始まります。途中でフェランドの声が入り、その予定は崩れ、二人の旋律が近づいていく。歌い始めた時と歌い終わった時で、彼女が選ぶ相手は変わっています。その成り行きを見たグリエルモも、今度は怒りと悲しみに襲われます。

結婚契約を結んだ、その時に

アルフォンソは、青年たちに現実を受け入れるよう促します。そして、姉妹と変装した青年たちの結婚が準備されます。デスピーナは今度は公証人に変装し、契約書を読み上げます。署名するのは姉妹。フィオルディリージはフェランドの扮する男と、ドラベッラはグリエルモの扮する男との結婚を受け入れます。

祝宴の乾杯では、姉妹とフェランドが、過去の思いを杯に沈めようと穏やかな旋律を追いかけます。一人だけ、グリエルモは同じ気持ちになれません。甘く重なる三人の歌の下で、彼は怒りをこぼします。四人で座っているのに、心はそろっていない。モーツァルトは、その食い違いを同時に聞かせます。

そこへ軍隊の合唱が響き、元の恋人たちの帰還が告げられます。姉妹はあわてて新しい相手を隠します。青年たちは軍服に戻って現れ、アルフォンソがわざと落とした結婚契約書を拾い上げます。秘密が暴かれたと思った姉妹は、恐怖と後悔に襲われます。

やがて青年たちは異国風の衣装を再び見せ、すべてが変装の芝居だったと明かします。驚くのは姉妹だけではありません。医者と公証人を演じていたデスピーナも、二人の正体を知って混乱します。仕掛ける側のつもりだった彼女まで、より大きな仕掛けの中にいたのです。

アルフォンソは四人を和解へ導き、全員が、理性を頼りに人生の出来事を受け止めようと歌います。舞台の騒ぎは収まります。けれど、四人はもう、開幕時の無条件な自信には戻れません。終幕で誰と誰を結び、どんな表情で幕を閉じるかは、演出の大きな見せ場です。原語台本は和解と抱擁を示し、最後の組み合わせを名前で指定してはいません。[1]

有名曲と聴きどころ|最初は「風よ、穏やかに」から

親密な音のやり取りを思わせる、18世紀の音楽室。

この作品の入口に向いているのは、《風よ、穏やかに》。三人の声が寄り添う穏やかな時間を味わってから、フィオルディリージの二つのアリアを続けて聴くと、物語の奥行きが見えてきます。強い決意が、弱さをさらす祈りへ変わる。その変化を、同じ声が聞かせてくれるからです。

全曲を観る時は、独唱だけでなく、二人以上で歌う場面にも注目してください。このオペラでは、会話が歌に変わるたびに、人と人の距離が動きます。代表的な六曲を、物語の順に紹介します。

① 風よ、穏やかに|Soave sia il vento

歌うのはフィオルディリージ、ドラベッラ、ドン・アルフォンソ。第1幕、船を見送る三重唱です。波を思わせる弦の揺れに、女声二人と低い男声が重なります。穏やかな声の重なりを聴きながら、一人だけ別れの事情を知っているアルフォンソを見ると、美しい祈りの中に芝居の不思議な影が差します。

② 岩のように動かず|Come scoglio immoto resta

フィオルディリージが、変装した男たちの求愛を拒むアリア。声が大きく上下するたびに、自分の愛を守る意志が強調されます。立ち姿や視線まで堂々としていると、後の迷いとの落差が鮮やかになります。難しい音を聴くだけでなく、彼女が誰に向かって忠実さを示しているのかを追うと楽しめます。

③ 愛のそよ風は|Un’aura amorosa

第1幕のフェランドのアリア。恋人の愛を信じている彼が、柔らかく長い旋律を歌います。高い声を張り上げて誇示するより、優しい息の流れの中で幸福を伝える曲です。その穏やかさを覚えておくと、第2幕で裏切りを知った時の苦しさが、いっそう深く感じられます。

④ 心をあなたに差し上げます|Il core vi dono

第2幕、グリエルモとドラベッラの二重唱。心を贈る、受け取る、というやり取りが、旋律の受け渡しにもなっています。相手が歌ったことをもう一人が受け入れ、やがて二人の声が並ぶ。小さな肖像の交換と、声の距離が縮まる瞬間を一緒に見ると、誘惑が成功する過程を耳でも目でも追えます。

⑤ お願い、愛しい人よ、許して|Per pietà, ben mio, perdona

フィオルディリージの第2幕のアリア。穏やかな部分でホルンが寄り添い、長い歌の線が、まだ恋人を大切に思う心を支えます。やがて声の動きが切迫し、守りたい気持ちと揺れる心がぶつかります。《岩のように動かず》と続けて聴くと、同じ人物の声が、外へ向けた宣言から内面の告白へ変わるのがわかります。

⑥ もうすぐ、愛する人の腕に抱かれて|Fra gli amplessi in pochi istanti

第2幕、フィオルディリージとフェランドの二重唱です。恋人へ向かう予定を歌う彼女の前に、別の男が割り込みます。最初は食い違っていた二人の言葉と旋律が、次第に一つの方向を向く。人物の気持ちが変わる場面を、音楽が途中から書き換えていくような面白さがあります。[2]

作品が面白くなる、二つの見方

口ひげと衣装を替えるだけで始まる、危うい恋の実験。

1.試されているのは、男たちの自信でもある

青年たちは、恋人の忠実さを証明するつもりで賭けに参加します。ところが、その証明のために自分たちが嘘をつき、相手を誘惑する役を引き受けます。姉妹の心を揺らすため、別れの悲しみを与え、同情を誘い、愛の言葉を繰り返す。結果が望みどおりでないと、今度は自分たちが傷つきます。

ドラベッラを口説くことに成功したグリエルモは、一度は優位に立ちます。自分の恋人はまだ忠実で、友人の恋人だけが揺れたからです。しかし、フィオルディリージがフェランドを受け入れると、その立場は崩れます。相手の成功を喜べないという、賭けの矛盾が表に出るのです。

題名は「女はみんなこうしたもの」といった意味です。この舞台で見えてくるのは、女性の心の変化とともに、自信、嫉妬、見栄に振り回される男性の姿でもあります。誰が正しいかを急いで決めず、四人の表情を順に追うと、一方だけを笑っていられない喜劇になります。

2.嘘の状況で、本当の感情が歌われる

出征も服毒も変装も、芝居です。それでも、姉妹が別れを悲しむ気持ちは本物です。新しい相手への戸惑いも、恋人を思って自分を責める苦しさも、彼女たちにとっては現実として起きています。モーツァルトの音楽は、その気持ちを十分な時間をかけて聞かせます。

《風よ、穏やかに》の柔らかな和音を聴く時、事情を知る観客も、姉妹の祈りを受け止めずにはいられません。《お願い、愛しい人よ、許して》では、仕掛けの先がわかっていても、彼女が忠実であろうとする苦しさに心が動きます。台本の仕掛けを楽しむ耳と、一人の人間の声を聴く耳が、同時に働くのです。

だから終幕の和解にも、いくつもの受け止め方が生まれます。人の弱さを知って一緒に生き直すのか。それとも、笑顔の下に傷が残っているのか。これは作品の場面と音楽から広がる読み方です。最後の明るい合唱を、登場人物がどんな目で歌っているか。その表情まで見ると、このオペラは幕が下りてからも心に残ります。

モーツァルトとダ・ポンテが作った「恋人たちの学校」

モーツァルトの肖像。バルバラ・クラフト、1819年。没後に描かれた肖像画。パブリックドメイン。 出典

『コジ・ファン・トゥッテ』K.588は、モーツァルトがロレンツォ・ダ・ポンテの台本に作曲した二幕のオペラです。1789年秋に作曲が始まり、1790年1月26日、ウィーンのブルク劇場で初演されました。『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』に続く、二人の最後のオペラ共同作業です。[1][3]

『フィガロの結婚』では、大勢の人物の思惑が一日の騒動を作ります。『コジ・ファン・トゥッテ』では、中心は六人。姉妹、恋人たち、仕掛け人、女中という小さな集団の中で、二人組や三人組の組み合わせが変わり、人の心が少しずつ違って聞こえてきます。

ロレンツォ・ダ・ポンテの肖像。ナサニエル・ロジャーズに基づくミケーレ・ペケニーノの版画、1822年頃。パブリックドメイン。 出典

台本の副題は『恋人たちの学校』。何を学ぶ学校なのかと考えると、作品の見え方が変わります。姉妹は自分の心が揺れることを知り、青年たちは愛を試した結果に傷つき、デスピーナも自分がすべてを知っていたわけではないと気づきます。アルフォンソの実験を通して、誰もが開幕時には知らなかった自分に出会うのです。

ダ・ポンテの台本は、貞節を試す恋人や変装した求愛者という、古くからある物語の仕掛けを組み合わせています。『フィガロの結婚』のように特定の戯曲をそのまま原作とした作品ではなく、ダ・ポンテによる台本として読むのがわかりやすいでしょう。二人の男が相手の恋人を試すという配置が、少人数の舞台に強い緊張を生みます。

1790年1月26日、ブルク劇場での初演を告知する劇場ビラ。作者不詳。パブリックドメイン。 出典

舞台の設定はナポリ。姉妹はフェラーラ出身で、ナポリに住む女性として台本に紹介されています。海辺の庭、家の部屋、再び庭へと移りながら、短い時間に出来事が集中します。外国人の衣装や医者の変装が、日常のすぐ隣に別の世界を作り出すのです。[1]

現在の上演では、現代のリゾートや別の時代へ舞台を移すこともあります。例えば新国立劇場の2024年公演では、キャンプ場を舞台にした演出が使われました。見る映像の衣装がこの記事の挿絵と違っていても、恋人の組み合わせと、誰が仕掛けを知っているかを押さえれば、物語の中心を追えます。[3]

初めて観るなら、二つの顔を覚えておく

最初に覚えたいのは、青年たちの素顔と変装した顔です。フェランドはドラベッラの恋人で、変装後はフィオルディリージを口説く。グリエルモはその逆。字幕で名前を全部追うのが忙しければ、この二本の線だけを頭に置いておきましょう。

もう一つは、人物が歌い始める前と、歌い終わった後の違いを見ること。拒んでいた手が贈り物を受け取り、去るつもりだった人が相手へ近づく。重唱は、気持ちの変化が起きている現場です。

上演は長めなので、まず《風よ、穏やかに》とフィオルディリージの二つのアリアを聴いてから全曲に進む方法もおすすめです。初めは恋人の顔を変えるだけの芝居に見えていたものが、やがて人の心の形まで変えてしまう。笑いながら観ていたはずなのに、最後には少し考え込んでいる。その余韻まで楽しみたい、モーツァルトの恋の喜劇です。

参考資料と画像の出典

[1] モーツァルテウム財団:Così fan tutte 原語台本・校訂本文:人物・舞台・初演日・場面順・賭け・変装・肖像の交換・結婚契約・終幕

[2] 新モーツァルト全集:Così fan tutte K.588(1991年校訂):曲の原語名・曲順・歌う人物・音楽の構成

[3] 新国立劇場:2024年コジ・ファン・トゥッテ公演:ダ・ポンテ三部作・二幕・上演言語・現代キャンプ場への舞台移行・休憩込み約3時間30分

[4] Royal Ballet and Opera:2016年上演の公式映像情報:上演時間の実例:公式映像の収録時間164分(商品表記。舞台上演の固定時間としては用いない)

モーツァルトの肖像。バルバラ・クラフト、1819年。没後に描かれた肖像画。パブリックドメイン。

ロレンツォ・ダ・ポンテの肖像。ナサニエル・ロジャーズに基づくミケーレ・ペケニーノの版画、1822年頃。パブリックドメイン。

1790年1月26日、ブルク劇場での初演を告知する劇場ビラ。作者不詳。パブリックドメイン。

場面挿絵・イメージ画像・相関図は、本記事のためのオリジナル制作です。

\ 最新情報をチェック /

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました