オッフェンバック『地獄のオルフェ(天国と地獄)』あらすじ・聴きどころを解説|妻を救いたくない夫の大騒動

あの『天国と地獄』は、夫婦の別れ話から始まる

神話世界の地獄を思い描く、宴会場のイメージ。

運動会やテレビで、一度は耳にしたことがある、あの猛烈ににぎやかな旋律。オッフェンバックの『天国と地獄』として親しまれている音楽は、神々が地獄で踊り狂う場面から生まれました。ところが、その舞台を最初から観ると、意外なことに気づきます。主人公の夫は、死んだ妻を取り戻したくないのです。

原題は《Orphée aux enfers》、日本では『地獄のオルフェ』『天国と地獄』などの名で知られる作品。愛する妻を救うため冥界へ下りたオルフェウスの神話が、ここではすっかり裏返されています。夫婦仲は冷えきり、神々は退屈し、世間体だけがやたらと元気。そんな人々を、甘い旋律と軽快なリズムが次々と巻き込んでいきます。

有名な曲を聴く楽しさに加えて、その曲へたどり着くまでの大騒動を知る楽しさがある。『地獄のオルフェ』は、笑いながら人間の建前をのぞける音楽劇です。

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『地獄のオルフェ』の基本情報

作曲ジャック・オッフェンバック(1819〜1880)
台本エクトール・クレミュー、リュドヴィク・アレヴィ
題材オルフェウスとエウリディケの神話を使った風刺喜劇
初演1858年10月21日、パリのブフ・パリジャン座
原語・ジャンルフランス語。歌と台詞で進むオペラ・ブッフ(オペレッタとしても親しまれる)
構成1858年版は2幕4場。1874年の拡大版は4幕12場
物語の舞台神話世界のテーベ近郊、オリュンポス、地獄
上演時間2幕版は台詞・カットにより、演奏と芝居でおおむね約1時間半〜2時間。休憩込みは約2〜2時間半が目安。拡大版を含む実例として、ローザンヌ歌劇場2023年公演は休憩込み約2時間40分

この記事は、1858年版につながる2幕4場の流れで物語を紹介します。上演によって曲の追加や場面の区切りが変わるため、観劇時はその公演の構成と所要時間を確認すると安心です。[1][2][3]

1分でわかるあらすじ

音楽家オルフェと妻ユリディスは、互いに別の相手を想い、結婚生活にうんざりしている。ユリディスの恋人は、羊飼いに化けた地獄の王プルートン。蛇にかまれた彼女は、その正体を知って地獄へ行く。妻の死を喜ぶオルフェを、世間の評判を体現する「世論」が叱り、妻を返してもらうよう神々の王ジュピテルへ訴えさせる。退屈していた神々も地獄へ押しかけるが、ジュピテルまでユリディスに恋をし、ハエに変身して近づく。宴会の後、妻を連れ帰るオルフェに「振り向くな」という条件が課される。ジュピテルの電撃で彼は振り向き、妻を失う。夫は内心喜び、ユリディスは酒神バッカスに仕えるバッカントとなり、神話は陽気に書き換えられる。

登場人物と相関図――本音は、みんな別のところにある

オルフェとユリディスは夫婦。プルートンとジュピテルは彼女に近づき、世論は夫に救出を求める。

図は物語の中心となる五人の関係をまとめたものです。オルフェとユリディスは夫婦ですが、愛情はすでに離れています。プルートンとジュピテルは彼女をめぐって競い、世論はオルフェへ「夫としての義務」を求めます。

オルフェ(Orphée)ユリディスの夫。ヴァイオリンを弾く音楽家。妻を救う英雄の役を引き受けさせられるが、本心では別れたい。通常テノール。
ユリディス(Eurydice)オルフェの妻。夫の演奏にも結婚生活にも退屈している。プルートンとの恋に希望を持つが、地獄でも自由を求める。ソプラノ。
プルートン(Pluton)/アリステ(Aristée)地獄の王。地上では羊飼い・養蜂家アリステに変装し、ユリディスへ近づく。同一人物。通常テノール。
ジュピテル(Jupiter)神々の王。秩序を守る顔をしながら、自分もユリディスを口説く。通常バリトン。
世論(L’Opinion publique)世間の評判、道徳、体面を人の姿にした存在。オルフェを救出へ向かわせる。現在は主にメゾソプラノの配役。
ジョン・スティクス(John Styx)プルートンの召使いで、ユリディスの見張り役。かつて王だった思い出話を繰り返す。低い男声で演じられることが多い。

ほかに、ジュピテルの妻ジュノン、愛の神キュピドン、伝令神メルキュールなどが登場します。神々を全員覚えようとするより、「ここにも退屈している人がいる」と眺めると、群像の笑いが見えてきます。

詳しいあらすじ――地上も天上も、建前だらけ

第1幕・第1場|夫婦げんかと、歓迎される妻の死

夫のヴァイオリンに耳をふさぐユリディス。

テーベ近郊の田園。ユリディスは、隣に住むアリステを想っています。神話のオルフェウスなら、その音楽に誰もが心を奪われるところですが、妻は夫のヴァイオリンを聞くのも嫌。オルフェにも別に想う相手がおり、二人は結婚を続けることに喜びを見いだせません。

妻が別れを望んでも、夫には評判への恐れがあります。しかもオルフェは、妻に近づくアリステを懲らしめようと麦畑に蛇の罠を仕掛けています。夫婦の不満と恋人への敵意が、のどかな風景の中で妙に生々しく絡み合うのです。

アリステの牧歌『Moi, je suis Aristée』は、そんな空気を柔らかく包みます。蜂蜜を作る牧人の気さくな歌。しかし、その素朴さは仮の姿。アリステの正体は、地獄の王プルートンです。

彼に導かれて麦畑へ入ったユリディスは、蛇にかまれます。プルートンが正体を明かすと、彼女は夫との暮らしを離れ、恋人と地獄へ行けることを喜びます。死の場面に、悲劇の嘆きとは違う明るさが流れる。ここで観客は、この作品が神話をどこまでひっくり返すつもりなのかを知ります。

プルートンと地獄へ向かうユリディス。

ユリディスは夫へ置き手紙を残し、プルートンと去っていきます。帰宅したオルフェが手紙を読むと、その反応は悲嘆ではなく歓喜。ようやく自由になれたと喜ぶ彼の前に、世論が現れます。

世論は、妻がさらわれたのに喜ぶ夫を許しません。妻を取り戻さなければ、音楽家としての評判も生徒も失うと迫ります。こうしてオルフェは、自分が望んでいない救出を始めることになります。愛が背中を押す神話が、体面に背中を押される旅へ変わったのです。

第1幕・第2場|退屈なオリュンポスから、地獄へ遠足

世論に連れられたオルフェが、オリュンポスの神々に訴える。

舞台は神々の住むオリュンポスへ。そこでは誰もが退屈しています。ジュピテルは神々へ規律を説きますが、彼自身の恋愛遍歴も周囲には知られています。妻ジュノンは、地上から美女がさらわれたと聞くと、まず夫を疑います。

やがてユリディスを連れ去ったのはプルートンだとわかります。ジュピテルが彼を問いただす一方、神々は厳しい生活への不満を爆発させます。『Aux armes, dieux et demi-dieux』という反乱の合唱が、天上の威厳をにぎやかな抗議へ変えてしまいます。神々が求めているのは、もっと楽しく暮らすことなのです。

そこへ、世論に連れられたオルフェが到着します。彼は妻を返してほしいと訴えますが、熱意はありません。それでも世論が横にいる以上、立派な夫らしく振る舞う必要があります。

ジュピテルは救出を引き受け、地獄へ向かうと決めます。神々はこれを絶好の気晴らしと受け取り、同行を望みます。妻を救うための遠征は、いつの間にか神々の団体旅行になってしまう。第1幕は、地獄行きを喜ぶ集団の勢いで閉じられます。

第2幕・第1場|地獄の密室へ、ハエになった王が入る

地獄へ来たユリディスは、期待していた恋人との時間を楽しめていません。プルートンに部屋へ閉じ込められ、召使いジョン・スティクスに見張られているのです。夫を離れても、また誰かの都合で自由を奪われる。彼女の退屈は、場所を変えて続いています。

ジョンは元ボイオティア王。『Quand j’étais roi de Béotie』で、自分の昔の栄華を語り、ユリディスへ好意を示します。忘却の川レーテーの水を飲んで仕事を忘れるのに、この思い出だけは何度でも出てくる。取りとめのない昔話が、妙に耳へ残る歌になるところに、オッフェンバックの喜劇のうまさがあります。

一方、ユリディスを探しているジュピテルも、彼女を救うだけのつもりではありません。自分が彼女へ近づきたいのです。プルートンの警戒をくぐり抜けるため、ジュピテルはハエの姿で部屋へ入ります。

ハエになったジュピテルに、ユリディスが気づく。

ここで始まるのが、有名な『ハエの二重唱』。ユリディスは肩に触れる気配を感じ、飛び回る虫を捕まえようとします。ジュピテルは羽音のような声で応じ、歌は追いかけっこと戯れの形を取ります。神々の王の口説き文句が、虫の羽音に変わる。偉そうな人物ほど、声と身ぶりの落差が笑いを生む場面です。

やがてジュピテルは正体を明かし、彼女をオリュンポスへ連れていくと約束します。二人は、宴会でユリディスをバッカント姿に変装させ、神々が帰るときに紛れ込ませる計画を立てます。プルートンは異変に気づきますが、ジョンは忘却の水のせいで役に立ちません。救出のはずだった旅は、恋の抜け駆けをめぐる騒動へ進んでいきます。

第2幕・第2場|宴会、ギャロップ、そして振り向く夫

地獄の宴会で、神々とユリディスが踊る。

地獄では神々が宴会を開いています。ユリディスはバッカントの装いで現れ、酒神をたたえる『J’ai vu le dieu Bacchus』を歌います。歌に呼応して一同の熱気が高まり、天上の節度は遠い記憶になります。

続いて、ジュピテルは上品なメヌエットを踊ろうとします。その整った身のこなしから、全員参加の『地獄のギャロップ』へ。この大騒ぎで鳴る旋律が、カンカンとして広く親しまれる、あの音楽です。細かな筋を忘れていても、ここへ来れば身体が先に反応してしまいます。

宴会に紛れて逃げようとするジュピテルとユリディスを、プルートンが止めます。ジュピテルがオルフェへ妻を返すと約束していたことを持ち出すのです。ほどなく、世論に連れられた夫が到着。神々はさっきまでの乱痴気騒ぎを隠し、急に威厳を取り戻したふりをします。

ジュピテルはユリディスを返すと宣言し、ひとつの条件を課します。地上へ帰るまで、妻を振り返って見てはいけない。神話でおなじみの条件が、ようやくここで登場します。

ところがオルフェは、なかなか振り向きません。ジュピテルは自分の思惑をかなえるため、電撃を飛ばします。驚いたオルフェは思わず振り向き、条件に違反して妻を失います。台本の仕掛けは雷の権威を使った、いわば強引な反則。愛の弱さが招く悲劇も、ここでは神の都合で起こる喜劇になります。

世論は失敗を嘆きますが、オルフェは内心、この結末に満足しています。プルートンが彼女を取り戻そうとすると、ジュピテルはユリディスをバッカントにすると宣言。彼女はバッカスに仕える者となり、喜びの中へ迎えられます。夫婦の再結合ではなく、夫婦が別れることによって騒動が収まる。最後まで見事に裏返った神話です。

有名曲と聴きどころ――まずは『地獄のギャロップ』から

ヴァイオリンとタンバリンが伝える、音楽と踊りの楽しさ。

最初に一曲だけ聴くなら、『地獄のギャロップ』がおすすめです。知っている旋律の入口から舞台へ入り、その後にハエの二重唱を聴くと、オッフェンバックが集団の熱狂と小さな身ぶりの両方を音楽にできる作曲家だったことがわかります。

地獄のギャロップ|神々の威厳が、リズムに負ける

第2幕の宴会で踊られる、作品最大の名物。きっぱりした二拍子、短い動機の反復、弾む伴奏が、次の動きへ身体をせき立てます。軽い足取りの旋律が勢いを増し、集団全体へ伝染していくところを聴いてみてください。上品なメヌエットとの落差まで観ると、単に速い曲として聴く以上の可笑しさがあります。

ハエの二重唱|恋の駆け引きが、羽音になる

歌うのはユリディスと、ハエに変身したジュピテル。ユリディスの流れる歌に、ジュピテルの羽音を模した声が入り、相手へ近づいては逃げる動作と結びつきます。声の軽さ、間の取り方、言葉の代わりになる音。その細かなやり取りが、立派な恋の二重唱を、虫と人間の戯れへずらします。

『ボイオティアの王だった頃』|昔話が止まらない召使い

ジョン・スティクスが過去を語る歌。素直な旋律が繰り返されるため、昔の肩書を持ち出す人物のくどさが、そのまま耳へ残ります。本人は思い出に浸っているのに、相手はその話を望んでいない。この温度差は、声を荒らげずに笑いを生む演技の見せ場です。

アリステの牧歌|素朴な恋人の仮面

地上でプルートンがアリステとして歌う、のどかな曲です。歌の柔らかさだけを楽しんだ後で、彼の正体を思い出すと、その気さくさが違って聞こえてきます。伴奏や旋律が描く田園の穏やかさと、そこに隠された企みの対比が聴きどころです。

神々の反乱|天上を揺らす、にぎやかな抗議

『Aux armes, dieux et demi-dieux』では、神々が集団でジュピテルへ不満をぶつけます。ひとりの独白から大勢の合唱へ広がると、退屈も反抗心も一気に公共の騒ぎになる。言葉の勢いと声の重なりを追えば、神々が聖なる象徴から、文句を言う身近な集団へ変わる瞬間が感じられます。

バッカスをたたえる歌|ユリディスが宴会の中心に立つ

『J’ai vu le dieu Bacchus』は、ユリディスがバッカント姿で歌う場面。彼女の声に一同が応じると、閉じ込められていた女性が、宴会を動かす存在へ変わります。歌い手と群衆の呼応を聴くと、音楽が彼女の居場所を作っていく様子が見えてきます。

妻を救いたくない夫と、遊びたい神々

威厳と笑いを重ねた二つの仮面。

世間体だけが、救出劇を本気で進めている

この物語には、夫婦の愛を取り戻したい人がほとんどいません。オルフェは別れたい。ユリディスは自由になりたい。プルートンとジュピテルは、彼女を自分の側へ置きたい。その中で「正しい夫の行動」を本気で求めるのが、世論です。

しかも世論は、舞台の外から人物を評価するだけではありません。直接現れ、夫を叱り、旅へ連れ出し、最後には舟まで動かします。世間の目という見えない力が、足と手を持った存在になる。それがこの作品の鮮やかな仕掛けです。

オルフェの言葉を聴くときは、「これは本人の望みか、立派に見せるための演技か」を追ってみてください。夫らしい嘆きの奥に別の本音が透けるほど、救出劇の形と中身のずれが面白くなります。英雄になるよう求められた人間が、英雄になりたくない。その困り顔が、この喜劇を最後まで動かしています。

音楽が、神々の肩書を脱がせていく

ジュピテルは秩序を説き、プルートンは自分の立場を守ろうとします。しかし、音楽が始まると、肩書より欲望が目立つようになります。反乱の合唱では神々が文句を言い、ハエの二重唱では王が虫の羽音を出し、ギャロップでは全員が踊ります。

その変化は、威厳のあるものを乱暴に壊すだけの笑いとは少し違います。牧歌の甘さ、二重唱の軽やかさ、踊りの楽しさが、まず聴く人を引きつける。こちらも音楽を楽しんでいるうちに、神々の立派な顔がほどけてしまうのです。

天上では退屈し、地獄では大騒ぎするという逆転も、耳で実感できます。神々がどんな規則を口にするかと同じくらい、どんな音楽で身体を動かすかを見る。そうすると『天国と地獄』という親しみ深い題名が、場所の上下以上に、建前と本音の距離を表すものとして聞こえてきます。

1858年のパリで、古い神話が新しい喜劇になった

オッフェンバック。ナダール撮影、原写真は1870年代頃。1910年の複写、Adam Cuerdenによる修復版。 出典:Wikimedia Commons

オッフェンバックは、パリで小さな音楽喜劇を育ててきた作曲家です。1858年に初演された『地獄のオルフェ』は、その活動をより大きな規模へ押し広げた重要な成功作となりました。古代神話の人物に、当時の観客にも身近な夫婦の不満、世間の評判、権威者の身勝手を重ねたことが、作品の笑いを支えています。

オルフェウスの物語は、音楽が死の世界をも動かすという、音楽劇にとって特別な題材でした。グルックの『オルフェオとエウリディーチェ』では、妻を失った主人公の嘆きが大きな聴きどころになります。オッフェンバックの舞台は、その高貴なイメージを知る観客へ、夫婦の本音をぶつけます。ヴァイオリンを聴きたくない妻がいるという設定だけでも、神話の音楽家の立場は危うくなるのです。

エドモン・モランによる『オリュンポス』の挿画(1858年)。パブリックドメイン。 出典:Wikimedia Commons

この作品は上演の中で改訂を重ね、1874年にはゲテ座で4幕12場の大きな版へ拡張されました。舞台装置や踊りの規模も広がり、後の公演には両版の要素を組み合わせたものもあります。初演の年月日と、目の前の舞台の幕数が食い違って見えるのは、そうした成立の歩みがあるためです。[2]

よく聴く長い序曲には、もう一人の音楽家がいる

演奏会で親しまれている長い『天国と地獄』序曲は、オッフェンバックの作品中の旋律を用いて、カール・ビンダーが編んだものです。1858年版の舞台は、もともと短い器楽の導入から芝居へつながります。ビンダーの序曲では、旋律を並べて演奏会用の大きな流れを作り、終盤のギャロップへ向かいます。[2]

そのため、序曲を聴いて作品を知る楽しみと、舞台のどの場面でその旋律が生まれるかを知る楽しみは、よく補い合います。あの速い曲が最初から流れ続けるわけではなく、夫婦げんか、天上の反乱、密室の口説き、宴会を経て爆発する。舞台全体を観ると、旋律の背後に人々の欲望が見えてきます。

ジュピテル役のデジレ(1858年)。ウルリク・グローブ撮影。パブリックドメイン。 出典:Wikimedia Commons

初めて観るなら、立派な台詞の裏の本音を追う

初めて観るときは、三つのことだけ押さえておけば十分です。夫婦は互いに別れたいこと。世論は夫に救出を求めること。そしてジュピテルも、助けるふりをしながら恋の争いへ加わることです。

神々の名前が次々と出てきても、人物が「何を言ったか」と「何をしたいか」のずれを見れば、物語は追えます。歌に入る前後で誰の立場が変わるかにも目を向けてください。ハエの二重唱ではジュピテルがユリディスへ近づき、宴会では彼女が集団の中心に出ます。音楽が芝居を前へ動かしています。

そして、あのギャロップが聞こえてきたら、神々の威厳がどこへ消えたかを眺めてみてください。初めは身近な夫婦の不満だった騒動が、天上も地獄も巻き込んだ大宴会になっている。『地獄のオルフェ』は、よく知る一曲へ、こんなに愉快な道筋をつけてくれる作品なのです。

参考資料と画像の出典

[1] クレミュー『Orphée aux Enfers』原語台本(2幕4場)

[2] Jean-Christophe Keck:Offenbach Edition Keck 1858年版校訂報告

[3] ローザンヌ歌劇場 2023年公演プログラム

[4] Operone 原語台本

歴史資料の作者・年代・利用条件は、各画像のキャプションと出典リンクに記載しています。人物相関図と物語挿絵は、台本に沿った本記事のオリジナルです。

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