マスネ《マノン》のあらすじ・聴きどころを解説|愛と贅沢に揺れる少女の物語

愛する人と、華やかな暮らし。その両方を望んだマノン

二人の暮らしを思わせる、小さなテーブルと手紙。

修道院へ向かう途中で恋に落ち、見知らぬ青年とパリへ逃げる。マノンの物語は、そんな大胆な出発から始まります。ところが、愛する人との質素な暮らしだけでは満たされない彼女の前に、宝石と贅沢を約束する男が現れます。

マスネの《マノン》が描くのは、恋とお金のどちらかを簡単には選べない少女です。恋人のデ・グリューを愛している。それでも、若さと美しさを讃えられ、華やかな世界で生きてみたい。その願いが二人を引き離し、やがて取り返しのつかない場所へ連れていきます。

小さなテーブルに別れを告げる歌、恋人を忘れようとする祈り、教会での情熱的な再会。舞台の賑わいから二人だけの切実な声へ、音楽の表情が鮮やかに変わるフランス・オペラです。

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1分あらすじ / 登場人物 / 詳しい物語 / 聴きどころ / 作品の見方 / 成立背景

作曲ジュール・マスネ(1842〜1912)
台本アンリ・メイヤック、フィリップ・ジル
原作アベ・プレヴォー『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』(1731年)
初演1884年1月19日、パリのオペラ=コミック座
言語・構成フランス語/全5幕・6場(第3幕が2場)
舞台18世紀初頭のフランス。アミアン、パリ、ル・アーヴルへの道
演奏時間音楽のみ約2時間40分〜3時間。
休憩込み約3時間10分〜3時間30分が目安。2019年オペラ=コミック公演は休憩込み3時間10分

1分でわかるあらすじ

修道院へ送られる途中のマノンは、青年デ・グリューと恋に落ち、二人でパリへ逃げます。けれど、愛する人との質素な暮らしでは、華やかな生活への憧れを抑えきれません。彼の父が二人を引き離そうとしていると知りながら、富豪の誘いに心を動かされ、恋人に危険を知らせないのでした。

連れ戻されたデ・グリューは、失恋の苦しみから聖職者を目指します。それを聞いたマノンは彼のもとへ駆けつけ、許しを求めます。彼も愛を捨てきれず、二人は再び一緒になります。

しかし、マノンの贅沢で金は尽き、彼は彼女に促されて賭博に手を出します。勝ち続けた末、負けた相手にいかさまだと告発され、二人とも逮捕されてしまいます。

父に救われた彼とは違い、マノンは国外へ送られることに。彼は護送途中の彼女と再会し、逃げようとしますが、衰弱した彼女にはもう歩く力がありません。マノンは彼の許しと変わらぬ愛を受け止め、その腕の中で息を引き取ります。

登場人物と人物相関図

マノンとデ・グリューの恋を中心に、家族と富裕な男たちが関わります。画像を押すと拡大できます。
マノンソプラノ。修道院へ向かう途中の少女。デ・グリューへの愛と贅沢への憧れの間で揺れます
騎士デ・グリューテノール。マノンに恋する青年。父の意向に逆らい、彼女との生活を選びます
レスコーバリトン。マノンの従兄で軍人。賭け事を好み、最後には二人の再会を助けます
デ・グリュー伯爵バス。青年の父。息子とマノンの関係に反対し、家へ連れ戻そうとします
ブレティニーバリトン。マノンに贅沢な暮らしを提供する富裕な男
ギヨー・ド・モルフォンテーヌテノール。マノンを口説く金持ち。賭博で負けた後、二人を告発します

デ・グリューという姓の父子が登場するので、本文では恋人の青年を「デ・グリュー」、父を「父の伯爵」と呼び分けます。レスコーはマスネ版では兄ではなく従兄です。その他に、華やかな社交の世界を彩るプセット、ジャヴォット、ロゼットという三人の女優も登場します。

詳しい物語――出会いから、最後の再会まで

第1幕|修道院への旅が、パリへの駆け落ちに変わる

アミアンの宿で出会うマノンとデ・グリュー。

アミアンの宿の中庭。旅人たちで賑わう場所へ、マノンが馬車で到着します。迎えに来たのは従兄のレスコー。家族は遊び好きな彼女を修道院へ入れるつもりで、レスコーがその道中を見守る役を任されています。

マノンにとっては初めての旅です。見たことのない景色や行き交う人々に心を奪われ、修道院へ行くことまで忘れかけていました。「まだぼんやりしているの」と歌う最初のアリアには、驚きも笑いも、ふと湧く寂しさも入り混じります。

宿にいる金持ちのギヨーは、さっそくマノンを口説きます。金ならいくらでもあると自慢し、自分の馬車を用意しておくと告げますが、マノンは相手にしません。レスコーも彼を追い払い、彼女に家の名誉を守るよう言い聞かせます。その本人は、仲間との賭け事へ出かけてしまうのでした。

一人になったマノンは、宿にいた女優たちの衣装や装身具を思い返します。あんなふうに着飾り、一生を楽しく過ごせたら。自分を戒めても、憧れは消えません。そこへ、父のもとへ帰る途中のデ・グリューが現れます。

二人は互いに強く惹かれます。マノンが修道院へ送られると聞いたデ・グリューは、彼女の自由を奪わせないと決意。マノンは、ギヨーが用意した馬車を思いつきます。二人でそれに乗ってパリへ行こう。口説くために用意された馬車が、別の男との駆け落ちに使われるのです。

二人はパリでの幸福を歌い、宿を去ります。戻ったレスコーはマノンが消えたと大騒ぎ。自分の馬車で逃げられたギヨーは人々に笑われ、二人への復讐を誓います。

第2幕|小さなテーブルに別れを告げる

二人で使ってきたテーブルを前に、別れを歌うマノン。

パリのヴィヴィエンヌ通りにある二人の部屋。デ・グリューは父へ手紙を書いています。マノンを妻にしたい。その願いを伝えるため、彼女の魅力を懸命に言葉にしています。二人で手紙を読み返す場面では、未来の結婚がすぐ手の届くところにあるように感じられます。

レスコーがブレティニーを連れて訪ねてきます。レスコーは家族の名誉を持ち出し、マノンと結婚する気があるのかと青年を問い詰めます。デ・グリューは、父への手紙を見せて自分の誠意を説明します。

その間にブレティニーはマノンへ、今夜、青年が父の命令で連れ去られる予定だと耳打ちします。それを止めずにいれば、望むだけの贅沢をさせてあげよう。マノンは恋人を失いたくありません。それでも、貧しさから抜け出す誘いを退けきれず、彼に危険を知らせません。

デ・グリューが手紙を出しに行き、一人になると、マノンは二人で使ってきた小さなテーブルに別れを告げます。一つの杯を分け合っていた暮らしを思い出す「さようなら、私たちの小さなテーブル」は、豪華な生活へ向かう彼女が、今ある幸福の価値も分かっていることを伝える歌です。

帰ってきたデ・グリューは、二人で静かに暮らす家を夢見たと話します。小さな家、木陰、澄んだ小川。飾り気のない幸福を描く「目を閉じると」を、マノンは涙をこらえながら聴きます。彼が描く未来と、彼女が選ぼうとしている生活は、すでに離れ始めています。

扉を叩く音が響きます。マノンは行かないでとすがりますが、事情を知らないデ・グリューは扉を開け、待ち構えていた男たちに連れ去られます。彼が消えた部屋に、マノンが残されます。

第3幕・第1場|パリの人気者が、恋人の行方を知る

パリの遊歩道クール・ラ・レーヌでは、店や人々で賑わう華やかな祭りが開かれています。ブレティニーと暮らすようになったマノンは、着飾り、人々の視線を集める存在になっています。

彼女は「私がどの道を歩いても」に続いて、ガヴォット「従いましょう、甘い声の誘いに」を歌います。青春は短いのだから、今を楽しもう。社交の場を自分の舞台に変えるような歌いぶりは、第1幕で見知らぬ世界に目を丸くしていた少女とは違います。

そこへ父の伯爵が現れ、ブレティニーと話します。デ・グリューはマノンを忘れようとし、サン=シュルピスで聖職者への道を選んだというのです。話を聞いたマノンは、青年が本当に自分を忘れたのか、伯爵に確かめずにはいられません。

ギヨーはマノンを喜ばせようと、オペラ座の踊り手たちを呼び寄せます。それでも彼女の心は、もう祭りにありません。レスコーに馬車を頼み、デ・グリューに会うためサン=シュルピスへ向かいます。

第3幕・第2場|忘れたい面影が、目の前に現れる

サン=シュルピスで再会し、許しを求めるマノン。

サン=シュルピスでは、デ・グリューの説教が女性たちの評判になっています。父の伯爵は息子に、家柄にふさわしい女性と結婚し、普通の家庭を築くよう勧めます。青年は譲らず、信仰の中で生きる意志を示します。

父が去った後、デ・グリューは一人で「ああ、消え去れ、優しい面影よ」を歌います。忘れたいのは、今も心を占めるマノンです。静かな生活を得たはずなのに、歌は抑えきれない痛みへ膨らんでいきます。彼が彼女を忘れていないことは、この声から伝わります。

そこへマノンが現れます。青年は、裏切った彼女を拒み、立ち去るよう求めます。マノンは自分の過ちを認め、かつての愛を思い出してほしいと訴えます。言葉だけでは届かないとみると、今目の前にいる自分の手、声、瞳へと彼の意識を向けます。

「この手は、あなたが握ったあの手ではないの?」と始まる二重唱で、マノンは過去の恋を現在へ引き戻します。デ・グリューは抵抗しようとしますが、最後には愛を認め、彼女と再び一緒に生きる道を選びます。

第4幕|恋を取り戻しても、お金の問題は残る

賭博場でギヨーの告発を受ける二人。

舞台はパリの賭博場、オテル・ド・トランシルヴァニー。レスコーや三人の女優、ギヨーたちが集まっています。再び暮らし始めた二人ですが、マノンの出費によってデ・グリューの資金は尽きています。

デ・グリューは賭け事を嫌がります。マノンは、少し勝てばまた豊かに暮らせると促し、レスコーも背中を押します。青年はついに応じ、ギヨーと勝負します。するとデ・グリューが続けて勝ち、マノンは喜びに沸き立ちます。

負け続けたギヨーは、いかさまだと青年を非難します。デ・グリューは侮辱に怒り、場は騒然となります。ギヨーが去ると、マノンはすぐ逃げようと求めますが、青年は拒みます。ここで逃げれば、不正を認めたように見えてしまうからです。

やがてギヨーは警察を連れて戻り、父の伯爵も現れます。マノンとデ・グリューは逮捕されます。父は息子については自分が救うと告げますが、マノンを助けようとはしません。二人は引き離され、マノンは国外へ送られることになります。

第5幕|ル・アーヴルへの道で、二人はもう一度会う

護送の途中で再会した二人の、最後の別れ。

父の力で救われたデ・グリューは、レスコーとともにル・アーヴルへ向かう護送隊を待っています。マノンは、国外への移送を命じられた女性たちと一緒に連行されているのです。青年は力ずくでも彼女を奪い返したいと考えますが、頼みにした仲間たちは来ません。

レスコーは別の方法を取ります。護送の兵士へ金を渡し、マノンと会う時間を作るのです。さらに見張りの兵士にも対処しようと、二人のもとを離れます。解放されて自由になったのではなく、逃げるためのわずかな機会を得たところです。

現れたマノンは、すでに病み、ひどく衰弱しています。デ・グリューは遠い土地へ行かせはしない、一緒に逃げようと励まします。彼女は自分が彼を苦しめたことを悔やみ、許してほしいと願います。青年は、再び愛を返してくれた彼女を責めません。

マノンは宿での出会い、馬車、手紙、小さなテーブル、サン=シュルピスの黒い服を思い出します。二人の暮らしと別れが、弱くなった声の中へ戻ってきます。デ・グリューが出発を促しても、彼女はもう歩けません。

夜空の星を美しいダイヤモンドになぞらえたマノンは、愛を告げ、最後の口づけで別れを伝えます。デ・グリューは、かつて彼女が歌った「この手は、あなたが握ったあの手ではないの?」を呼び返します。マノンは出会った頃の言葉をもう一度口にし、彼の腕の中で息を引き取ります。

聴きたい6曲――同じ声が、少女から恋人へ変わる

華やかな街の場面と対照をなす、静かな祈りの空間。

最初の1曲なら、第2幕の「さようなら、私たちの小さなテーブル」をおすすめします。相手は人ではなく、二人で暮らした部屋の家具で、恋人には言えない思いがまっすぐ聴こえます。華麗な高音だけでなく、言葉の端ににじむためらいや、旋律の小さな揺れを味わえる曲です。

① まだぼんやりしているの|第1幕・マノン

原語は Je suis encore tout étourdie。初めての旅で見たものを従兄へ話す歌です。軽く弾むフレーズの間に、寂しさや戸惑いが差し込み、また笑いへ戻ります。元気な登場曲としてだけでなく、短い間に感情が次々に変わる人物紹介として聴いてみてください。

② さようなら、私たちの小さなテーブル|第2幕・マノン

原語は Adieu, notre petite table。二人にとっては大きすぎるほどだった小さなテーブル、一つの杯を分け合った記憶が歌われます。音楽は身近なものを語る柔らかさを保ちながら、別れの痛みを深めます。彼女は贅沢に惹かれているのに、この暮らしを無価値だとは思っていません。その揺れが、歌を切実にします。

③ 目を閉じると|第2幕・デ・グリュー

原語は En fermant les yeux。夢に見た小さな家と、そこで待つマノンを歌います。柔らかく続く旋律を、声がどれだけ静かに保てるかが魅力。強く愛を叫ぶのとは違い、安心して暮らせる場所を思い描く音楽です。この歌の直後に彼が連れ去られるため、夢の穏やかさがいっそう胸に残ります。

④ ガヴォット|第3幕・マノン

中心となる歌い出しは Obéissons quand leur voix appelle。前の「私がどの道を歩いても」から続けて聴くと、人々の注目を浴びるマノンの登場がよく分かります。古風な舞曲の姿を借りた、軽やかで華やかな歌です。装飾や高い音の鮮やかさに加え、言葉を余裕たっぷりに運ぶ調子にも耳を向けてください。

⑤ ああ、消え去れ、優しい面影よ|第3幕・デ・グリュー

原語は Ah! fuyez, douce image。去れと呼びかける相手を、彼はなお「優しい面影」と呼んでいます。忘れようとする意志と、忘れられない愛が同じ歌の中でせめぎ合います。静かな独白から声が大きく広がり、祈りへ向かう変化を聴くと、直後のマノンの登場がどれほど危ういものか伝わります。

⑥ この手は、あなたが握ったあの手ではないの?|第3幕・二重唱

原語は N’est-ce plus ma main。マノンが手、声、瞳の記憶を呼び起こし、デ・グリューの拒絶を揺さぶります。最初から二人の声が幸福に重なるのではなく、呼びかけと抵抗を経て距離が縮まるところに注目。第5幕でこの歌を青年が呼び返すときには、同じ言葉が、彼女を引き留める願いへ変わっています。

楽譜で場面を追いたい方は、IMSLPの《マノン》の楽譜・台本一覧へ。

小さなテーブルと宝石――マノンは何を失いたくなかったのか

華やかな暮らしを象徴する、装身具と金貨。

愛を捨てた、と一言では片づかない

第2幕だけを見ると、マノンは恋人をお金と引き換えにしたように見えます。実際、連れ去りの計画を知らせないという選択は、二人の関係を決定的に傷つけます。それでも「小さなテーブル」への別れを聴けば、彼女が愛を失う痛みも感じていることが分かります。

第3幕では、贅沢な生活の中にいる彼女が、デ・グリューを追って教会へ行きます。さらに第4幕では、取り戻した恋人に賭博で金を作るよう求めます。愛を選んだら贅沢への憧れが消える、という人物ではないのです。行動に矛盾が残るからこそ、再会しただけでは問題が解決せず、物語がもう一度動きます。

「若いうちに楽しもう」という歌も、彼女の選択を理解する手掛かりになるでしょう。若さや美しさが永遠には続かないことを、マノンは華やかに歌います。その音楽を聴いた後で最終幕へ進むと、輝く時間を急いでつかもうとした彼女の姿が、より具体的に見えてきます。

二人を裁く世界では、救われ方まで違う

周囲の男たちは、それぞれ違う形でマノンに関わります。ギヨーは金で口説こうとし、ブレティニーは贅沢を条件に恋人との別れを促します。レスコーは家族の名誉を説きながら賭け事へ出かけ、父の伯爵は息子に家柄にふさわしい結婚を求めます。二人の恋は、こうした人々の都合や金銭と切り離せません。

逮捕されたときには、その差が決定的になります。デ・グリューには、救い出せる父がいる。マノンには、同じ救済がありません。青年の賭博をめぐって起きた事件なのに、最後に国外への移送を受けるのは彼女です。結末では、誰が守られ、誰が切り捨てられるかに目を向けてみてください。

1731年の小説が、1884年のパリで歌い始める

ジュール・マスネ。Eugène Pirou撮影、1895年。パブリックドメイン。 出典:Wikimedia Commons

原作は、アベ・プレヴォーが1731年に発表した『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』です。愛する女性のために道を踏み外す青年の物語は、その後も繰り返し舞台化されました。マスネの《マノン》は、メイヤックとジルによる台本で、1884年1月19日にオペラ=コミック座で初演されます。

マノン役のマリー・エルブロン。Atelier Nadar、1884年。パブリックドメイン。 出典:Wikimedia Commons

初演のマノンはマリー・エルブロン、デ・グリューはジャン=アレクサンドル・タラザックが歌いました。マスネは、同じ主人公の中にある無邪気さ、華やかさ、情熱、衰弱を、一人の歌手の声でつなぎます。マノン役の魅力は、ひとつの声の美しさだけでなく、場面ごとにその人が変わって聞こえるところにもあります。

《マノン》の舞台を伝える版画。Paul Destez、1884年『L’Univers illustré』。パブリックドメイン。 出典:Wikimedia Commons

「オペラ=コミック」と聞くと喜劇を連想しがちですが、ここでは台詞を含むフランスのオペラの形式を指します。《マノン》でも、歌と話す言葉が組み合わされます。マスネは台詞に管弦楽を添える手法も用い、会話から音楽へ移る場面をしなやかにつないでいます。

原作を舞台へ移す際には、人物や出来事も組み替えられました。原作で兄だったレスコーは従兄になり、マノンの最期はルイジアナから、ル・アーヴルへの道へ移されています。第3幕に社交の華やかな場面とサン=シュルピスの再会を並べた構成も、彼女が二つの世界を行き来する姿を鮮明にします。

同じ原作から生まれたプッチーニの《マノン・レスコー》は、別のオペラです。マスネ版はフランス語の5幕、プッチーニ版はイタリア語の4幕。マスネ版の最後はフランスの道端、プッチーニ版ではアメリカの荒野になります。

初めて観るなら、二人の望む暮らしを追う

初めて観るなら、マノンとデ・グリューの望みの違いを追ってみてください。彼は二人だけの静かな家を夢見て、彼女は愛も華やかな生活も望みます。第2幕で並ぶ二つの歌は、その違いをはっきり聴かせてくれます。

第3幕では、マノンが人々の前で見せる顔と、青年に許しを求める顔を比べてみてください。第5幕には、二人が歩んできた場面の記憶が戻り、出会いから一緒に聴いてきた歌と言葉が、最後の別れを二人だけのものにします。

参考資料と歴史画像の出典

[1] フランス語原語台本(Meilhac / Gille)

[2] フランス語台本・第5幕(フランス語のみ参照)

[3] Opéra-Comique:Manon(2019年公演)

[4] Opéra national de Paris:Manon(2021/22)

[5] IMSLP:Manon (Massenet, Jules)

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